テマリブログ

てまり窯の作業日報など

試験片作り

今日は、釉薬試験片作り。
陶芸教室用の飴釉の試験をしていて、自分の無知さを思い知った。塩基性成分の組成が発色にこれほど影響しているとは! 飴釉なんて、透明釉に酸化鉄を5%程度入れれば、すぐ出来ると思っていたけど違うのだ。銅釉では、Mgの存在で、暗く渋めになることを知っていたけれど、鉄釉でも、似たような現象があるのだ。陶磁器釉の科学のp274に、次のように書いてある

天目釉(飴釉)の塩基性成分のうち、アルカリ土類においてMg2+>Ca2+>Ba2+のようにイオン半径の小さいものほど濃くまた黒く発色させる効果が大きい。

また、Fe2+とFe3+の平衡に関しても、記述があり、二価鉄の割合が多いほど鉄の色は濃くなるという。これは、塩基成分の塩基度も関係しているらしい。遷移金属は実に面白い。どうしてそうなるのか、メカニズムは? もっと勉強しなければ、理解出来ない世界。

大谷石の釉薬では、どうしたらFeの影響を小さくするかに腐心してきたけれど、飴釉では、逆に鉄分で、より良い発色をさせるにはどうすればよいかを考えなければならない。大谷石釉を考える上で、飴釉は、とても大切な釉薬だったのだ。飴釉というと、釜飯の釜に使う面白みに欠ける釉薬と思って、試験すらしようとしなかったけれど、鉄釉全般を考える上で、非常に大切な釉薬であることが、今頃分かった。

手計算でゼーゲル式を計算していた頃は、時間がかかって嫌になっていたけど、パソコンに計算してもらうようになって、釉薬を、より高い位置から見られるようになったと思う。組成が未知の材料を釉薬原料にしようとする時でも、ゼーゲル式は道標になってくれる。